デジタルトランスフォーメーション(DX)が急速に進む現代社会において、ITインフラは企業の事業継続性と競争力を支える重要な基盤となっています。
クラウド化やセキュリティの強化、自動化技術の発展により、インフラエンジニアの役割はますます高度化・多様化しています。
この記事は、IT業界への就職や転職を考えている方、特にシステムの基盤構築や運用に興味がある方に向けて、インフラエンジニアという職業の全体像を詳しく解説します。
安定性と技術的チャレンジのバランスが取れたこの職業について、理解を深めていただければ幸いです。
- インフラエンジニアの仕事内容と求められるスキルを知りたい人
- 経験年数別の平均年収や一般的な労働環境を知りたい人
- キャリアパスと将来性を知りたい人
- 未経験からインフラエンジニアになる方法を知りたい人
インフラエンジニアの基本情報
インフラエンジニアは、ITシステムの基盤となるハードウェアやネットワーク、サーバー、ストレージ、セキュリティなどの環境を設計・構築・運用・保守する技術者です。
企業や組織のビジネスを支えるITインフラを安定的に稼働させることで、サービスの継続性と信頼性を確保する重要な役割を担っています。
- IT企業(SIer、クラウドサービスプロバイダー等)
- 一般企業の情報システム部門
- データセンター運営企業
- 通信事業者
- クラウドサービス事業者
- ITコンサルティング会社
インフラエンジニアの平均年収
経験年数 | 平均年収 |
---|---|
未経験〜3年 | 400万円〜500万円 |
3年〜5年 | 500万円〜600万円 |
5年〜10年 | 600万円〜800万円 |
10年以上 | 800万円〜1,200万円以上 |
専門性や担当領域、勤務先企業の規模などにより大きく異なります。
クラウド技術やセキュリティなどの専門知識を持つエンジニアは平均より高い傾向にあります。
平均的な年間休日数・労働時間・残業時間
年間休日数(企業により異なる) | 120日前後 |
基本労働時間 | 9:00〜18:00(8時間勤務)が一般的 |
残業時間 | 月20〜40時間程度 |
夜間・休日のシステムトラブル対応や計画メンテナンスが発生することも働く時には注意が必要です。
インフラエンジニア業界特有の文化や慣習
- システム障害対応のためのオンコール(待機)体制がある企業が多い
- 大規模なシステム更新は業務への影響を最小限にするため、深夜や休日に実施されることが多い
- チームでの連携が重視され、情報共有や引継ぎの文化が根付いている
- 技術の変化が速いため、継続的な学習と資格取得が奨励される環境
インフラエンジニアの具体的な仕事内容
インフラエンジニアの業務内容
インフラエンジニアの業務内容は、大きく分けると、
要件定義や設計、構築を実施する「上流工程」と
運用や保守業務を担当する「下流工程」の2種に分かれています。
上流工程では、納品するまでにシステムの構築を行い、
下流工程ではシステムに障害やトラブルが発生した時に対応する業務があります。
細かな業務内容は以下のようなものがあります。
- システム監視とパフォーマンス分析
- 障害対応と復旧作業
- セキュリティ対策の実装と監視
- バックアップとリカバリの管理
- キャパシティ管理と拡張計画
- 各種ミドルウェアの設定と管理
- 自動化スクリプトの作成と実行
- ドキュメント作成とナレッジ管理
インフラエンジニア主な責任と役割
上記の業務内容から、システムの安全稼働の維持やセキュリティリスクを最小限にしたり、不具合が起こった時に迅速な対応をすることを求められます。
また、運用のコスト・システムの最適化などの役割があります。
インフラエンジニアの仕事の流れ
- 9:00出社
- 10:00プロジェクトのMTG
- 11:00作業準備
- 12:00昼食
- 13:00作業開始
- 16:00設計書の更新
- 16:30チームミーティング
- 17:30日報
- 18:00退勤
インフラエンジニアが使用するツールや必要なスキルは?
インフラエンジニアの業務は多岐に渡るため、広範囲のスキルが必要になります。
大きく分けると以下の9個のスキルが必要になります。
- サーバー知識とスキル(Linux、Windows Server)
- 設計スキル(Ansible、Chef、Puppet)
- ネットワークの知識とスキル(ルーター、スイッチ、ファイアウォール)
- プログラミングスキル
- セキュリティの知識(Zabbix、Nagios、Datadog、(WAF、IDS/IPS))
- クラウドサーバーの知識・スキル(AWS、Azure、GCP)
- インフラ設計のスキル(Docker、Kubernetes)
- ソフトウェアに関する知識
- 仮想化の知識とスキル(VMware、Hyper-Vなど)
- IaC(Infrastructure as Code)ツールなどの自動化のスキル(Terraform、CloudFormation)
- バックアップソフトウェア
インフラエンジニアに向いている人の特徴
インフラエンジニアは、以下のような性格や特性が必要と言われています。
- 機械に触れることが好き
- 効率化することが好きな
- 細部への注意力と正確性がある
- ストレス耐性とプレッシャー下での冷静さ
- 知的好奇心がある
- コミュニケーション能力が高い
- 責任感がつよい
こういった適正がある方は、インフラエンジニアに向いています。
インフラエンジニアで実際に活躍している人の共通点
- 技術的好奇心が強く、新しい技術に対する学習意欲がある
- 障害対応から学びを得て、再発防止に活かせる
- ドキュメント作成や情報共有を大切にしている
- エンドユーザーや事業の視点を持っている
- 予防保全的な思考を持ち、潜在的な問題を事前に察知できる
インフラエンジニアに向いていない人は?
反対にインフラエンジニアに向いていない人は以下のような人になります。
- 地道な作業が苦手
- 急なトラブル対応は避けたい
- 夜勤はしたくない
というような人には向いていません。
特にインフラエンジニアは、突発的な障害や利用時間の少ない時間帯(夜間)の業務が多いため、不規則な働き方をしたくないという人にはおすすめできない職種です。
インフラエンジニアのキャリアパスと成長
入職後のステップアップの道筋
- 1〜3年目ジュニアエンジニア
基本的な運用業務、監視、簡単なトラブルシューティング
- 4〜7年目ミドルエンジニア
設計支援、構築作業の主担当、複雑な障害対応
- 8年目〜シニアエンジニア
アーキテクチャ設計、プロジェクト管理、チームリード
その後、個人のスキルや適正によって、
スペシャリスト(特定技術領域の深い専門知識を持つ技術的リーダー)や
マネージャー(チーム管理、戦略立案、ベンダー選定など)
などのキャリアを築いていけます。
インフラエンジニアの経験を積むことで目指せるポジション
- インフラアーキテクト
- ITインフラストラクチャマネージャー
- クラウドアーキテクト
- セキュリティスペシャリスト
- DevOpsエンジニア
- SREエンジニア(Site Reliability Engineer)
- ITサービスマネージャー
- CTO(最高技術責任者)
インフラエンジニアから転職可能な職種
インフラエンジニアは幅広い知識を保有しているため、さまざまな業界への転職が可能です。
- システムインテグレーター
- セキュリティエンジニア
- クラウドエンジニア
- ITアーキテクト
- ITコンサルタント
- プロジェクトマネージャー
インフラエンジニアのスキルアップの方法
インフラエンジニアは、必要な知識やスキルが多岐にわたるため、
まずは、スキルマップ(=個人のスキルを数値化したもの)を作成することをお勧めします。
その後に以下のようは方法をお試しください。
- 資格取得(LPIC、CCNA/CCNP、AWS/Azure/GCP認定資格など)
- 社内外の勉強会や技術コミュニティへの参加
- 技術書籍やオンライン講座でのスキル習得
- 個人的な技術検証環境での実験
- 技術ブログの執筆やセミナーでの登壇
インフラエンジニアのメリット・デメリットは?
インフラエンジニアの5つのデメリット
- 不規則な勤務時間
システム障害対応や計画メンテナンスで深夜・休日勤務が発生することがあります。 - 高いストレス
障害発生時には大きなプレッシャーがかかる職業です。 - 技術の陳腐化
常に新しい技術を学び続ける必要があります。 - 定型業務の多さ
特に初期キャリアでは単調な作業が多いことがあります - 責任の重さ
システム停止が事業に直結するため、責任が重い職種です。
インフラエンジニアの5つのメリット
- 安定性と需要の高さ
企業のITインフラは必須であり、継続的な需要がある - 幅広い技術に触れられる
サーバー、ネットワーク、セキュリティなど様々な技術を横断的に学ぶことができます。 - 専門性の高さ
経験を積むことで専門性が高まり、市場価値が上がる - 目に見える成果
システムの安定稼働や改善によるパフォーマンス向上が数値でわかるため、成果が分かりやすい特徴があります。 - リモートワークの可能性
管理業務の多くはリモートでも実施可能です。
やりがいを感じる瞬間
- 複雑な障害を解決し、システムを復旧させたとき
- 設計・構築したシステムが安定して稼働しているとき
- 自動化によって運用効率が大幅に向上したとき
- 新しい技術を導入して事業に貢献できたとき
- チームメンバーの成長を支援できたとき
心身への負担とその対処法
- 不規則な勤務への対応:チームでのローテーション制導入、オンコール手当の充実
- ストレス管理:障害対応訓練の実施、ドキュメント整備による不安軽減
- 技術負債との向き合い方:定期的な技術更新計画、自動化による業務効率化
- 知識更新の負担軽減:学習時間の確保、社内勉強会の実施、資格取得支援制度の活用
インフラエンジニア業界の将来性・動向
インフラエンジニアの市場規模や成長率
日本のITインフラ市場は着実に成長を続けており、特にクラウドインフラ市場は年率10%以上で拡大しています。
DX推進に伴い、2025年までにクラウド関連市場は3兆円を超える見込みです。
インフラエンジニアの求人数も増加傾向にあり、特にクラウド技術やセキュリティに精通した人材の需要は高まっています。
インフラエンジニア技術革新の影響
- クラウドネイティブ化:オンプレミスからクラウドへの移行が加速
- 自動化・効率化:Infrastructure as Code(IaC)やCI/CDの普及
- コンテナ技術:Docker、Kubernetesなどのコンテナオーケストレーションの一般化
- ハイブリッドクラウド:複数のクラウドとオンプレミスを組み合わせた環境の増加
- エッジコンピューティング:分散処理ニーズの高まり
インフラエンジニアの今後の展望や課題
- AIによる運用自動化:AIOpsの発展による運用業務の効率化
- セキュリティの重要性増大:ゼロトラストアーキテクチャの浸透
- グリーンIT:環境負荷低減のためのエコフレンドリーなインフラ構築
- スキルセットの多様化:従来のインフラ知識に加え、開発スキルやビジネス理解も求められる
- 人材不足:経験豊富なインフラエンジニアの不足と育成の課題
- 災害対策・BCP対応:インフラ冗長化・分散化
- セキュリティ強化の必要性
サイバー攻撃の高度化によるセキュリティ強化が求められています。
インフラエンジニアの先輩の声

6年目
未経験から入職しましたが、最初は監視業務やヘルプデスクから始まり、徐々に構築や設計にも携わるようになりました。
インフラエンジニアは地道な作業も多いですが、自動化スキルを身につけることで業務効率が大幅に向上し、より創造的な仕事に時間を使えるようになりました。DevOpsの考え方が広まる中で、開発チームとの連携も増え、視野が広がったと感じています。

12年
インフラエンジニアの魅力は、企業の基幹を支える責任の重さとそれに伴うやりがいです。
確かに夜間の障害対応は大変ですが、自分が構築したシステムが問題なく稼働し続けることで多くのユーザーの業務を支えていると思うと、大きな達成感があります。
最近はクラウド化が進み、より高度な設計スキルが求められるようになってきましたが、その分キャリアの幅も広がっていると感じています。

インフラマネージャー
長年インフラエンジニアとして働き、現在はチームマネージメントを担当しています。
技術の変化は速いですが、基本的な考え方や障害対応の姿勢は変わりません。
若手エンジニアには、目の前の技術だけでなく、なぜその技術が必要なのか、ビジネスにどう貢献するのかを常に考えてほしいと伝えています。
最近はSREやDevOpsの概念が浸透し、インフラエンジニアの役割も進化しています。
インフラエンジニアになるには?
インフラエンジニアになるために必須の資格はありません。
しかし、未経験から転職する場合は、IT関連業務経験が求められることが多いです。
未経験から就職したい場合は、コンピュータサイエンスの基礎知識、ネットワーク基礎知識は身につけておきましょう。
ここではインフラエンジニアのキャリアパスと持っておいた方が良い資格についてお伝えします。
未経験からインフラエンジニアのキャリアパス
- Step1IT基礎知識の習得
書籍やオンライン講座でITインフラの基礎を学ぶ
- Step2資格取得
LPIC-1やCCNA、基本情報技術者などの基本資格を取得
- Step3転職エージェントの活用
IT未経験者向けの求人を探す
- Step4ヘルプデスクからのスタート
ユーザーサポート業務からIT業界に入る
- Step5運用代行企業への就職
24時間365日の監視・運用業務を行う企業に就職
- Step6インフラエンジニア研修プログラム
企業が提供する研修プログラムへの参加
というステップを踏んで、キャリアを積み上げていくことができます。
インフラエンジニアが習得するおすすめの資格・スキル
インフラエンジニアの学ぶべきスキルは多様です。
以下のような資格を身につけることで、あなたの市場価値を上げることができす。
基本的な資格 | LPIC(Linux技術者認定) CCNA/CCNP(Cisco認定ネットワーク資格) Oracle/SQL Server認定資格 (データベース関連) 情報処理技術者試験 (基本情報技術者、応用情報技術者) |
クラウド関連資格 | AWS認定資格(ソリューションアーキテクト等) Microsoft Azure認定資格 Google Cloud認定資格 |
セキュリティ関連資格 | 情報セキュリティマネジメント試験 CISSP(Certified Information Systems Security Professional) |
必須スキル | Linux/Windowsサーバーの管理 ネットワークの基礎知識 シェルスクリプト/PowerShell 仮想化技術の理解 クラウド環境の構築・運用 |
あると有利なスキル | プログラミング言語(Python, Go等) IaC(Terraform, Ansible等) CI/CD(Jenkins, GitHub Actions等) コンテナ技術(Docker, Kubernetes) データベース管理 |
インフラエンジニアのよくある質問(Q&A)
- Qプログラミングは必須スキルですか?
- A
必須ではありませんが、自動化やスクリプト作成のために基本的なプログラミングスキル(特にシェルスクリプトやPython)は持っていると有利です。
最近はDevOpsの流れもあり、プログラミングスキルの重要性は高まっています。
- Q年齢制限はありますか?
- A
法律上の年齢制限はありませんが、30代後半以降の未経験転職は難しい場合があります。ただし、関連業界からの転職や、強みとなる専門知識がある場合は可能性が広がります。
- Qリモートワークは可能ですか?
- A
企業やポジションによりますが、監視・運用業務はデータセンターでの作業が必要な場合もあります。
一方で、クラウドインフラの管理や設計業務はリモートワーク可能な企業も増えています。特にコロナ禍以降、リモートワーク対応の職場は増加傾向にあります。
- Q女性のインフラエンジニアは少ないですか?
- A
従来は男性が多い職場でしたが、近年は女性のインフラエンジニアも増えてきています。技術力や問題解決能力が評価される職種であり、性別に関係なくキャリアアップが可能です。
- Qオンコール対応はどのくらいの頻度で発生しますか?
- A
企業やチーム体制によりますが、一般的には数人〜十数人のローテーションで月に数回程度のオンコール当番があります。
重要システムほど対応頻度は高くなりますが、適切な自動化と監視体制により負担を軽減できる企業も増えています。
インフラエンジニアの職業のまとめ
インフラエンジニアは目立たない存在かもしれませんが、企業のビジネスを根底から支える重要な職業です。
技術の変化に対応しながらも、安定性と信頼性を守るバランス感覚が求められる、やりがいのある仕事といえるでしょう。
コメント