作業療法士（OT）の魅力と実際 – キャリアガイド

作業療法士は、高齢化社会の進展と医療の多様化により、作業療法士の需要は年々高まっています。
身体的・精神的障害を持つ方々の自立支援という社会的意義の高い仕事として注目されています。

医療と福祉の接点で働きたい方、人の日常生活の改善に貢献したい方、対人スキルを活かした仕事を探している方に特におすすめの職業です。

今回は作業療法士の職業についてお伝えします。

作業療法士ってどんな職業？

作業療法士（Occupational Therapist: OT）は、身体的・精神的な障害や高齢による機能低下などにより、日常生活や社会生活に困難を抱える方々に対して、「作業」を通じた治療・援助を行う専門職です。

ここでいう「作業」とは、食事・入浴・着替えなどの日常生活動作（ADL）から、仕事や趣味、社会参加といった幅広い活動を指します。

作業療法士は、医師の指示のもと、対象者一人ひとりの状態や生活環境を評価し、より自立した生活を送れるようリハビリテーションプログラムを立案・実施します。

理学療法士（PT）が主に運動機能の回復に焦点を当てるのに対し、作業療法士は日常生活の質（QOL）の向上により重点を置いているのが特徴です。

理学療法士のリンク

作業療法士の主な仕事の内容

作業療法士の主な業務は以下のようなものがあります

作業療法士の主な業務①評価・計画

患者や医師からヒアリングを行い、患者の状態を評価して、患者に合わせたリハビリテーションプログラムを計画したり、修正を行います。

作業療法士の主な業務②治療・訓練

リハビリテーションプログラムを計画して、実際に患者に対してリハビリを行います。

作業療法士の主な業務③記録・報告

リハビリを行ったら、患者の経過の記録や家族に対しての説明、勉強会の参加などがあります。

作業療法士の働き方は？

多くの作業療法士は週5日、1日8時間の勤務が一般的です。

病院では交代制勤務もありますが、デイケアや訪問リハビリなどの施設では日勤のみの場合が一般的です。

1日の仕事の流れ（病院勤務の例）

上記はあくまでも一例です。
職場環境によっても違いがありますので注意しましょう。

作業療法士の平均収入は？

作業療法士の平均収入は432.5万（令和5年賃金構造基本統計調査参考）です。

また、初任給や昇給はこのようになっているとされます。

初任給の月収	約22万円〜25万円/月
経験5年程度	約27万円〜32万円/月
経験10年程度	約35万円〜40万円/月

勤務先や地域によって差があり、管理職になると更に収入が増えるとされています。

作業療法士が働く場所は？

作業療法士の主な勤務先は大きく分けると、以下のように分けることができます。

医療機関	総合病院（リハビリテーション科） リハビリテーション専門病院 精神科病院 クリニック
福祉・介護施設	介護老人保健施設 デイケアセンター 特別養護老人ホーム 障害者支援施設
その他	訪問リハビリテーション事業所 児童発達支援センター 特別支援学校（外部専門家として） 行政機関 教育・研究機関

作業療法士の必要な知識・スキル

作業療法士になるためには以下の知識とスキルが必要になります。

専門知識	解剖学・生理学の基礎知識 リハビリテーション医学の知識 精神医学・心理学の知識 作業療法評価法と治療技術 福祉用具や環境整備に関する知識
対人スキル	コミュニケーション能力 観察力と分析力 共感性と忍耐力 チームワーク能力
実務スキル	問題解決能力 記録・文書作成能力 計画立案・実行力 時間管理能力

作業療法士が取得すると有利な資格

作業療法士になるには作業療法士国家資格は必須になります。

作業療法士国家資格の条件

作業療法士国家試験の合格が必要 取得には、厚生労働大臣が指定する養成校 （3年制または4年制）の卒業が条件

それ以外にも以下ような資格があると昇給や転職に有利と言われています。

作業療法士に向いている人の特徴

以下のような人が作業療法士に向いていると言われています・

• 人と関わることが好きで、コミュニケーション能力が高い
• 観察力があり、細かい変化に気づける
• 忍耐強く、小さな進歩も大切にできる
• 創意工夫を楽しめる柔軟な発想力がある
• 多職種と協力してチームで働ける協調性がある
• 相手の立場に立って考えられる共感性を持っている
• 人の可能性を信じ、諦めない前向きさがある

といった人に向いています。

MBIT診断だと、ENFJ（主人公）やINFJ（提唱者）、ESFJ（領事官）、ISFJ（擁護者）など向いているとされています。

作業療法士で働くメリット・デメリット

作業療法士で働くメリット

• 対象者の生活改善や自立に直接貢献できるやりがい
• 国家資格を持つ専門職としての社会的な安定性
• 超高齢社会において需要が高く、就職先が比較的豊富
• 病院、施設、在宅など多様な活躍の場がある
• 対象者の成長や回復を間近で見られる喜び

作業療法士で働くデメリット

• 身体的・精神的負担が大きい場合がある
• 成果が見えにくく、進歩が遅いケースもある
• 給与水準は経験年数に比して上がりにくい傾向
• 夜勤や土日出勤がある職場もある
• 医師や他職種との連携が難しい場面も

業界の将来性・動向

日本の高齢化社会の進展に伴い、作業療法士の需要は今後も増加すると予測されています。特に以下の分野での活躍が期待されています：

• 高齢者の介護予防・認知症ケア
• 地域包括ケアシステムにおける在宅支援
• 精神障害者の地域生活支援
• 発達障害児への支援
• 就労支援・職場復帰支援

医療制度改革により、病院から地域へとケアの場が移行する中、作業療法士の活躍の場も広がっています。また、AI・ICTの発展により、遠隔リハビリテーションなど新たな介入方法も登場しつつあります。

キャリアパス

基本的なキャリアパス

1. 新人期（1〜3年目）：基本的な評価・治療技術の習得
2. 中堅期（4〜9年目）：専門分野の確立、後輩指導
3. ベテラン期（10年目以降）：管理職、専門家としての活動

専門性を深めるキャリア

• 特定の領域（身体障害、精神障害、発達障害、老年期など）のスペシャリストに
• 認定・専門作業療法士の資格取得
• 学会発表や論文執筆などの研究活動

管理職としてのキャリア

• リハビリテーション部門の主任・課長・部長へ
• 施設の管理者へ

その他のキャリアオプション

• 大学や養成校の教員
• 独立開業（訪問リハビリなど）
• 福祉用具開発・コンサルタント
• 海外での活動

よくある質問（Q&A）

Q: 作業療法士になるには何年くらい勉強が必要ですか？
A: 作業療法士の養成校には3年制の専門学校と4年制の大学があります。どちらでも国家試験の受験資格を得られます。

Q: 理学療法士（PT）と作業療法士（OT）の違いは何ですか？
A: 理学療法士は主に歩行など運動機能の回復を目的とするのに対し、作業療法士は日常生活動作や社会参加など生活全般の改善を目的としています。

Q: どんな対象者と関わることが多いですか？
A: 脳卒中などの身体障害、統合失調症などの精神障害、発達障害のある子ども、認知症の高齢者など、幅広い方々と関わります。

Q: 男女比はどのくらいですか？
A: 作業療法士全体では女性がやや多い傾向にありますが、近年は男性の増加も見られ、男女ともに活躍できる職場環境が整ってきています。

Q: 転職は多い職種ですか？
A: 需要が高く資格を持っていれば再就職しやすいため、ライフステージに合わせた転職は比較的容易です。

まとめ

作業療法士は、医療と福祉の接点で活躍する専門職として、人々の「その人らしい生活」を支援する重要な役割を担っています。
高齢化社会の進展により、今後も需要の高まる職業と言えるでしょう。

国家資格取得のためのハードルはありますが、一度資格を取得すれば長く活躍できる専門性の高い仕事です。
特に、人とのコミュニケーションを大切にし、相手の可能性を信じて支援できる方にとって、大きなやりがいを感じられる職業といえます。

身体面・精神面での負担や、成果が見えにくい難しさはありますが、対象者の小さな変化や成長に寄り添える貴重な経験ができます。
医療・福祉分野で人の生活に直接関わりたい方は、ぜひ作業療法士という選択肢を検討してみてください。